浄土真宗では、お位牌でなく過去帳を用いる理由について
お位牌と過去帳のそれぞれが、持つ意味について
お位牌や過去帳はどちらも、
先祖代々の戒名や法名、命日(亡くなられた日付)、俗名(生前の故人の名前)、享年(亡くなられた時の歳)を書き記す役目を担っていますが、両者には、大きな違いがあります。
お位牌の起源は、そもそも中国の儒教で、故人の生存中の官位(位)と姓名を牌と呼ばれる細長い札板に記載したのが始まりです。
『牌には霊の宿るもの』として大事に祀り、御先祖様を供養していました。
それが鎌倉時代に、禅宗の僧侶により、日本にもたらされ、日本の古来からの先祖崇拝と仏教とが結びつき、『故人の霊が宿るもの』としてお位牌を作り、先祖の追善供養を行いました。
※ 追善供養とは生きている人が亡くなった人の冥福を祈って行う供養のことを指します。
故人のために善を積むことで、故人へと回向(分け与えて)して、故人がより良い世界に生まれ変わり成仏できることを願うとともに、その善行が自分自身にも返ってくると考えです。
過去帳は、江戸時代に、幕府によって、キリスト教が禁止され、寺請制度により、衆生(民衆)は仏教徒としていずれかの寺院の檀家となり、一方、寺院は、現代でいう役所のような戸籍を管理する役割も担っていました。また、葬儀も寺院が執り行うようになり、檀家それぞれの戒名、俗名、享年など累代の記録する過去帳が作成され、寺院で保管されたのが始まりです。
檀家でも、仏壇に保管しておく家族の系譜を記載したジャバラの折本形式の過去帳を持つようになりました。
お位牌は、魂が宿り、故人そのものと考えられているに対して、過去帳は家系図のような、あくまでも記録書きとしての意味合いが強いことです
“位牌 = 霊の宿る所 ”という考えが、浄土真宗にはありません。
浄土真宗以外の宗派では、お位牌を作り、先祖の追善供養を行いますが、
浄土真宗の開祖=親鸞聖人は、煩悩まみれの私たちが、追善供養をしても救うことは出来なく、故人を救うのは阿弥陀様の力であると説き、
浄土真宗では、(往生即身仏)『人は亡くなると、供養をせずとも、必ず阿弥陀如来のはたらき(法)によって、すぐに迷わずお浄土へ導びかれ、仏弟子としてみな等しく仏になり,悟りにいたる』という教えです。
※ 余談ですが、そのため、浄土真宗の葬儀で、『ご冥福をお祈りします』とお声をかけるのは、『死後の暗闇の世界で迷っているあなたが、幸せになれますように』の意味に捉えられてしまいますので、使用は控えるようにしましょう。
※ そう目くじらを立てなくても、「故人が幸せであってほしい」との思いで、『ご冥福をお祈りします』と祈らなくても、故人は、阿弥陀仏の浄土に生まれて幸せになるんだから、わざわざ言わなくても大丈夫です。』と、捉えていただければ、宜しいかと思います。
※ 浄土真宗のご葬儀などの際にかける言葉としては、「心より(もしくは謹んで)お悔やみ申し上げます」や、「哀悼の意を表します」がよいでしょう。
亡くなられた方の宗派が判らない場合は、『ご冥福をお祈りします』は避けた方が宜しいです。
※ また、不祝儀の上書きも、浄土真宗の場合、『御霊前』ではなく、すでに ”ほとけ” となっているので『ご仏前 』になります。
前置きが長くなりましたが、浄土真宗では、亡くなったら、即 仏さまになっているので、この世に亡くなった人の霊が迷ったり、位牌そのものに魂が宿るという考えが、浄土真宗の教えにはありません。 追善供養しなくても、阿弥陀さまの他力本願により救われるので、浄土真宗ではお位牌を使用しません。
※『他力本願』と言えば、一般的には「他人まかせで、物事をしようとすること」という意味で使われますが、たいへんな誤解です。
もともとは、浄土真宗の用語で、他力とは、仏の力、阿弥陀仏の慈悲の力=はたらきを差し、阿弥陀様の生きとし生けるものを救わずにはおれないという強い願い(本願)のはたらき と言う意味です。
では、故人を偲ぶ、対象がないかと言うとそうではありません。
浄土真宗では過去帳を用います
浄土真宗では、
故人を偲ぶものとして、過去帳に 法名を記載します。
過去帳は、お位牌と同様に、法名、命日、俗名、享年を記載しますが、あくまでも記録書きであり、供養の対象ではありません。
本来 浄土真宗では、お仏壇は、御本尊である阿弥陀様を安置し、信仰する場所であると捉えています。
また、お仏壇は、そもそも供養の場所では無いので、過去帳の前にお水を供えたりしませんし、お仏壇の中に写真を飾ったりすることを嫌がるお寺様もいらっしゃいます。
写真を飾る場合は、お仏壇の手前に台の上に載せるか、お仏壇の真上は、阿弥陀様の上にモノを置くことになり、失礼にあたりますので、お仏壇に向かって右左どちらかの壁の長押に掛けましょう。
※ 供養をしないから、門徒は先祖をないがしろにしている訳ではなく、
実体としての亡き人は、姿を変えて阿弥陀さまの浄土に生まれ、仏さまとなられて、いつも私に寄り添っていてくれている。私たちは、亡き人が生まれた浄土を表すお仏壇を通して、先祖に感謝し、自分を見つめ直し、迷信などに惑わされず日々を送ることが出来るという考えです。
浄土真宗で、お位牌がある場合どうすればいいの?
浄土真宗では、
本来は、過去帳を使用しますが、
地域の習慣で、仏壇の中に位牌がある家庭も少なくありません。
お仏壇の中に、繰り出し位牌があるけど、どうしたら良いの?
現在、お位牌がある家庭では、霊が宿るところとしてでなく、記録書きと捉え、そのまま使用されてもよいと思います。
もし、お寺様が、過去帳に替えなさいと言われた時に、改めて過去帳を購入されると良いでしょう。
新しく亡くなられた方の法名を書き足す機会に、先祖の分も合わせて過去帳に全て書き写すことを勧められることがあります。
まとめ
“ 位牌 = 亡くなられた方の霊の宿る所 ” として位牌を用いて先祖供養する宗派と、
“ 往生即身仏 ” の教えの浄土真宗とでは、亡くなられた方の霊や位牌に対する考え方が違います。
浄土真宗の門徒の方は、浄土真宗の教えや考え方を正しく理解し、宗派の教えに合った過去帳をご用意しましょう。
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